2024.5.31 取材
(所属、役職は取材当時)

- 原子力機構で働く人 -

國分 陽子(東濃地科学センター)

「それぞれの分野の専門家が集まってタッグを組んだら最強のチームができました」 華やかな笑顔と穏やかな雰囲気で周りを包み込む國分さん。東濃地科学センターでマネジメント業務に追われる一方、負イオン源の開発など、加速器質量分析(AMS:Accelerator Mass Spectrometry)に関する研究開発にも熱心に取り組んでいます。各拠点を超えて強く太く広がっていく連携の輪、その中心で輝く國分さんがどんな人なのか分析していきます。



現在の業務について教えてください
東濃地科学センター(以下、「東濃」という)の戦略推進室で室長としてマネジメント業務を行っています。マネジメントと一言で言っても、センター内のあらゆる調整や予算管理など幅広く行っています。研究開発だけに集中できる環境ではありませんので、研究時間を確保するためには、時間の使い方を工夫して、効率よく業務をこなしていく必要があります。時間が限られているので、研究時間は思いっきり研究に集中しています。
東濃のよいところを教えてください
アクティブな研究者が多いところです。分析用の試料採取を行うためフィールドワークが多いですし、外部との共同研究も盛んに行っています。また、海外の学会にもベテラン、若手関係なく積極的に参加しています。このフットワークの軽さが、東濃拠点の成長に繋がっていると思っています。それから、人数が少ない中で、それぞれが専門家としての意識と責任感を持ちながら、ひとつの研究所で試料採取から分析、データ解析まで分担して一連の研究を完結できるのも東濃の魅力だと思います。
現在は負イオン源の開発など、AMSを使った研究開発をされているかと思いますが、大学の頃はどんな研究を行っていましたか?
放射化学を専攻していました。放射性物質が自然環境中にどのように降っているか、地衣類という植物を使って確認できないか調べていました。また、地衣類の中にも色々な種類があるので、種類のちがいを確認するため、試料に放射線を照射し、元素の定量分析を行っていました。分析時には原子力機構の施設を使っていたので、原子力機構とはその頃からの長いお付き合いです。
それが縁で原子力機構で研究者として働きたいと思ったんですね?
残念ながら違います。元々研究者になりたいと思っていませんでしたし、原子力機構に入社した当時は研究者のサポートをしたいと考えていました。原子力機構で最初に配属された部署では 、環境試料中に含まれる極微量核物質の検知や分析法の開発を行っていました。初めは先輩の研究者と一緒に分析や分析法の開発を行っていましたが、徐々に任されて自分でテーマを持って研究を行うようになりました。それでも研究者の意識はなかったのですが、上司や周りから支援をいただきながら、社会人ドクターを目指すようになって、研究者としての意識が生まれました。

研究のおもしろいところを教えてください
挙げ始めるときりがありませんが、分析法の開発ではどうしたら従来よりよくなるか検討を重ね、答えを見つけていくことが楽しいです。今まで分からなかったことが分かるようになるのも面白いですし、人の役に立つものをゼロから作り出していくことにやりがいを感じます。中学生の頃、人の役に立つ仕事がしたいと思っていましたので、研究という形で夢を叶えることができ、大変充実した日々を送っています。
研究者になる上で必要な素質は何だと思いますか?
探求心と思い通りにいかなくても投げ出さずに1つのことをやり抜く力。
そして、、なんといっても大事なのは研究を楽しむこと!
子どもの頃、好きだった科目は何ですか?
理科が好きでした。私が通っていた小学校では、理科専門の先生がいて、小学4年生の時には専門のおじいちゃん先生から授業を教わっていました。二酸化炭素にろうそくを入れると火が消えるとか、そんなに難しい実験ではありませんでしたが、いつも理科の時間がくるのを楽しみにしていました。
学生時代の國分さんについて教えてください
学生の頃もっと勉強しておけばよかった…という反省はさておき、大学の頃はクラスの仲が良くて楽しく過ごさせてもらいました。私が在籍していた筑波大学の自然学類は数学、物理学、化学、地球科学と異なる専攻の人達が混ざったクラス編成となっていました。お酒を飲んだり、遊びに行ったりもしましたが、その中でも特にテストの時の団結力が素晴らしく、自分の得意分野をお互いに教え合って乗り越えました。この時に自分一人では限界があること、各専門分野の人たちが自分の役割を発揮することでその限界を乗り越えられることを知り、チームとしての可能性を強く認識するようになりました。
原子力機構にも研究者のチームはありますか?
はい。原子力機構には素晴らしい研究者がたくさんいて、それぞれ連携しながら仕事をしています。私は東濃のチームで負イオン源の開発を行っていますが、もうひとつ東濃以外のメンバーとチームを作って、「自動包埋装置」の開発を行っています。このチーム発足のきっかけとなったのが、東濃で行っている加速器質量分析(AMS)の試料作製です。加速器質量分析を行う際、試料の前準備として、ピンセット2本を使って試料を金属のホイルで包んで数mmにする作業を行います。これがなかなか大変で…手間も時間も気力も必要な細かい作業で苦労していました。何とか解決できないかと相談したところ、分野を超えて専門家があれよあれよと集まり、自動で試料をホイルで包むことが可能な自動包埋装置が完成しました。技術的にも人柄的にも信頼できる素敵なメンバーがタッグを組んだら最強のチームができちゃいました。


「自動包埋装置」の開発チーム
手前:左から順に國分さん、大澤崇人さん、
奥:左から順に阿部さん、大澤辰彦さん




自動包埋装置試作機1号機



チームならではの良いところを教えてください
ひらめきがあっという間に形になるところです。新しいアイディアを思いついた時、仲間がいなくて一人だったら、形にするまで非常に時間がかかります。もし、自分ができないことをカバーし合える仲間がそばにいたら、上手く連携することでアイディアをすぐに形にすることが可能になります。現在、「自動包埋装置」チームでは2号機を製作していますが、「こんなのあったらいいよね」のつぶやきが、あっという間に設計から試作機完成にまで繋がりました。
良いチームですね。お忙しそうですが、ゆっくり休みが取れたら何をしたいですか?
一人でゆっくりリフレッシュします。リゾートで何も考えずひたすらのんびりしたいです。
穏やかな國分さんらしいです!
よく穏やかと言われますが、実はそうでもないです。自分の短所は?って聞かれたら、気が短いところと答えると思います。ちなみに、長所は微妙に積極的なところです。「微妙に」というところがポイントです。微妙な積極性を発揮して、面白いと思ったことは、とりあえず飛び込んでみます。
今後、目指しているものを教えてください
様々な分野の方と連携しながら、装置を作ったり、分析法を開発したり、それで今よりちょっと良い未来を作る。人々の役に立ちたいという想いはこれから先もずっと変わらないと思います。
最後に皆さんに一言お願いします
原子力機構は敷居が高いイメージと言われますが、原子力以外の分野にも活用できる技術開発を行っていますし、多様なバックグラウンドを持つ研究者が日々研究開発に取り組んでいます。まずは一歩コンタクトをとっていただけると嬉しいです。一緒に素敵なチームを作りましょう。

ありがとうございました



國分さんと東濃のイメージキャラクターのもぐら博士

関連リンク

日本原子力研究開発機構 新技術説明会(2024年度)
「加速器の未来を拓く、セシウムフリーを実現する高効率負イオン源」
https://shingi.jst.go.jp/list/list_2024/2024_jaea.html

第10回JAEA技術サロン
「有機元素分析の試料調整を自動化 -包むをもっと気楽に-」
https://tenkai.jaea.go.jp/salon/20240216/

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