2025.5.21 取材
(所属、役職は取材当時)

- 原子力機構で働く人 -

森 愛理(安全研究センター)

「やりたいと思ったことには、まず挑戦してみます!」そう笑顔で語る森さん。
原子力の専門家として放射性物質の被ばく評価や放射線防護に取り組む一方で、プライベートでは登山やランニング などで自然を大満喫しています。本稿では、研究にも趣味にも全力で向き合う森さんをご紹介します。



研究内容について簡単にご紹介をお願いします
原子力発電所で事故が発生し、放射性物質が環境中に放出されるような事態が起こった場合、食物を通して内部被ばくを受ける可能性があります。こうした事態における放射性物質による被ばく評価を行っています。
福島第一原子力発電所事故の際には、一部の海産物に対して出荷制限が行われました。この出荷制限による被ばく線量の低減がどの程度であったかを評価するとともに、今後の対策としてどのような手段が有効かを検討しています。事故時における防護対策の改善に貢献することを目指しています。
大学の時にはどんな研究をされていましたか?
地球科学の生物海洋化学分野に所属し、深海に存在する「炭水化物」に関する研究を行っていました。
深海に生息する生物やプランクトンにとって、炭水化物は重要な栄養源です。ところが、実際には一部の小さな炭水化物の塊は食べられることなく深海に残っていることが分かっています。なぜそれらが消費されずに残っているのか、その理由を明らかにするための基礎研究を行っていました。
大学院でも同じテーマを研究されていましたか?
いえ、大学院ではサンゴの栄養源に関する研究を行っていました。大学3年生の時、沖縄のサマースクールに参加しましたが、海洋環境やサンゴに関わる研究者の講義や、海洋環境の保全活動を行う方々からのお話、そして実際にこの目で見た海に感銘を受け、「より人々の生活に身近な研究がしたい」と思うようになりました。これがきっかけとなり、沖縄の大学院に進みました。沖縄の特別な空気の中での研究活動は、今振り返っても本当に楽しく、かけがえのない経験となりました。
沖縄の海から原子力機構に就職。志望動機は?
サンゴの研究はとても面白く、魅力的でした。大学で研究を続けることも一つの道ではありますが、自分の中ではもっと広い視野で将来を考えたいという思いがありました。
当時から約2年前に発生した福島第一原子力発電所の事故を受け、除染や風評被害といった放射線に関する問題が社会的にも非常に重要であると強く感じました。放射線の分野は学部生時代から興味があり、放射線取扱主任者の資格を取得していたため、これを活かして原子力防災に貢献したいという思いから、原子力機構で働くことを志望しました。
入社後、海外に出向をされていたと聞きました
はい。入社して4年後のことです。大学院時代に行っていた海洋研究の知見を活かし、出向という形で3年間、モナコにある国際原子力機関(IAEA)の海洋環境研究所で勤務していました。
モナコは「海洋大国」とも呼ばれ、海洋学者であったモナコ大公によって設立されたモナコ海洋博物館があるなど、海洋関係の研究に力を入れている国です。当時、フランスに住んで通勤していましたが、海がすぐそばにあって、海好きの私には理想的な環境でした。また、近くには山もあったおかげで、登山の楽しさにも目覚めることができました。今では海か山か聞かれたら、迷わず「山」と答えるくらい、山が好きです。

「山」の魅力を教えてください
たくさんありますが、まずは何と言っても「景色の美しさ」が魅力です。山の上から見る景色は日常の慌ただしさとは無縁で、現実を忘れてしまうほど素晴らしいです。そして、何よりも登り切ったときの達成感は本当に格別です。国内外を問わず、時間を見つけては山に登っています。
パワフルですね!その秘訣は…?
体力維持のため、お昼休みに時々ランニングをしています。走ると頭がすっきりして、午後の仕事にも集中できるんですよね。今度利尻島のマラソン大会にも参加予定ですので、自然の中を思いっきり楽しんでこようと思っています(後日談:無事完走できました! )
そんなアクティブな面がある一方で、ズボラなところもあります。例えば料理。森スタイルは「お鍋に一気に!」です。休日に大量に作った煮込み料理を毎日少しずつタッパーに詰めて、お昼に持ってきています。得意料理は…と聞かれたら、とりあえず煮込んでおけば間違いない…「ポトフ」です(ちょっとかっこよく言ってみました)

もし特別なスキルを何でも一つもらえるとしたら?
「晴れ女の才能」です。やっぱり山に登るときは、晴れていてほしいですから。
先ほどから研究よりも趣味(山)の話ばかりしていますが、自分にとってプライベートの充実はとても大切なことです。趣味が充実しているからこそ、日々の研究にも集中できるのだと思っています。私にとっては、研究もプライベートも、どちらも生きていく上で大切な要素ですので、うまくバランスを取りながら、どちらも全力で取り組んでいます。
研究をする上で大事にしていることは?
研究に対して嘘をつかないようにしています。後から「やっぱりあの時、ちゃんとやっておけばよかった」と後悔するのが嫌だからです。例えば、小さなミスに気付いたときに、「結果は変わらないから大丈夫」と流すのではなく、たとえ時間と手間がかかっても、もう一度計算し直すようにして、悔いが残らない選択ができるように心がけています。これからも、研究と真摯に向き合っていくために、この姿勢を大切にしていきたいと思っています。
現在の研究の課題を教えてください
外部とのやり取りはよく行っていますので、外部とのネットワークはある程度築けていると思っています。その一方で、機構内部でのつながりが少なく、連携する相手が固定されがちで、コミュニティが狭くなってしまっていることが課題です。今後は、機構外だけではなく、機構内の連携を広げることも意識しながら、より多くの人と協力していきたいと考えています。
最後に皆さんに一言お願いします
進路を決めたり、何かを選択したりするとき、不安や迷いは必ずあるものです。もしやりたいことがあるなら、ぜひ周りの人に相談してみてください。人に話すことで、考えが整理できたり、自分では思いつかなかった道が開けたりして、思いがけないチャンスが巡ってくる可能性があります。そして、チャンスが来た時には、怖がらずに飛びこんでみてください。不安はあるかもしれません。でも、やってみると自分が想像していたよりも案外できるものです。せっかくのチャンスを逃して後悔しないように!
登山もそうですが、挑戦した人にしか見えない景色があります。ぜひやりたいことに挑戦して、あなたにしか見えない景色を味わってください。応援しています。

ありがとうございました

関連リンク

原子力機構 安全研究センター リスク評価・防災研究グループ
https://www.jaea.go.jp/04/anzen/group/rarg/index.html

Ingestion doses from radionuclides in seafood before and after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident
Communications Earth&Environment (Internet), 6, p.356_1-356_11, 2025/5 https://jopss.jaea.go.jp/search/servlet/search?5078741