2024.11.1 取材
(所属、役職は取材当時)

- 原子力機構で働く人 -

末岡 茂(東濃地科学センター)

「子供の頃の夢は学者でした。」その夢を叶え、「地球科学」という分野で長年研究を続けてきた末岡さん。取材の際には、研究の面白さやプライベートのオフモードについて、はにかみながらも熱心に語ってくれました。環境問題やエネルギー問題だけではなく、日常生活から災害対策に至るまで、多岐にわたって関わりがある「地球科学」という学問に懸ける、末岡さんの山のように穏やかで深い想いを紹介します!

研究内容について簡単にご紹介をお願いします
一言で言うと、「山がいつどうやってできたか」を調べています。
分かりやすい説明をありがとうございます!もう少し詳しくお話を聞かせてください
フィッション・トラック(FT: Fission Track)法と呼ばれる手法を用いて岩石に含まれる鉱物の年代測定を行っています。鉱物に含まれる放射性核種は時間と共に別の安定した核種に変化します。鉱物に残っている放射性核種の量や、親核種と生成した娘核種の量の比などをFT法で調べることで、採ってきた岩石が経験した温度を推定することができます。
一般的に地面の温度は地下に行くほど熱くなります。また、山が速く隆起している場所では、地下深くの熱い場所から地表まで急速に冷やされるという特徴があります。私はこれらの特徴を基に、FT法を使って冷却の時期や大きさを調べ、山がいつからどれくらいの速度でできあがった(隆起した)かを調査しています。
山の隆起を調べることは、皆さんの生活にどのように関わってくるのでしょうか?
日本列島は収束するプレートの境界に位置しており、地震など地殻変動の影響を受けやすい環境にあります。山の隆起を調べれば、その地域の成り立ちが分かるだけではなく、地震の起こりやすさ、地面にどのような力がかかっているか、ということを推測でき、将来の自然現象による地質環境の変化の予測に役立ちます。
また、安全に放射性廃棄物の地層処分を行うためには、地下に埋めた廃棄物が長時間の隆起と侵食で地上に出てこないか、あるいは山ができることで地下水の流れが変わって放射性核種の閉じ込め能力に影響しないか、そういった地下環境の特性の調査・評価にも私の研究開発が関わっています。
これまでどんな研究をされてきましたか?
大学の卒業研究では、活断層の研究に取り組みましたが、空中写真を見て地層や地形を解釈するというアナログな方法が優柔不断な私には合っていなかったこともあり、修士からは数字で客観的な判断ができる年代学の手法に乗り換えました。当時、2つの研究室を行き来しており、地球物理学教室で地形やテクトニクスを学ぶ一方で、地質学鉱物学教室で年代測定の手法を修得しました。最近になって、複数の分野にまたがった研究をする研究者は増えてきていますが、当時はまだ珍しかったと思います。
どんなところが優柔不断だと思いますか?
そうですね…ぱっと頭に浮かびません…。質問されたときにすぐに回答できない、まさにこういうところでしょうか。
あとは、外食した時に店員さんが来るぎりぎりまでメニューを悩んでいたりします。店員さんが来てしまうと、待ってもらうことが申し訳ないので、そこでやっとメニューが決まる感じです。
東濃での普段の研究生活の様子を教えてください
仕事中は、基本的に集中モードです。オンオフがはっきりしていますので、勤務時間中は仕事に集中し、17時になったらさっさと帰ってオフモードに戻るという生活です。野外調査や学会などの出張で職場を離れていることも多いので、職場でしかできないことは職場にいる時に確実に終わらせるようにしています。あまりに集中しすぎて、居室で自席にいる時、一日中ほとんど喋らずに過ごすということもあります。

オフモードの過ごし方を教えてください
部屋で本を読んでいます。実はプチ歴史オタクですので、歴史小説をよく読みます。元々は中学生の時に司馬遼太郎の歴史小説にハマったのがきっかけです。大学の学部時代には理学部所属であるにも関わらず、日本史の講義を聴講していました。他には、好きなお酒を飲んだりしています。特に日本酒が好きで、趣味が高じて国際きき酒師の資格を取ったほどです。フィールドワークや学会等で、国内外の様々な場所に行く機会がありますので、業務が終わったらオフ時間に色々なお酒を楽しく飲んでいます。
研究者としての目標はありますか?
目指しているのは、地球について幅広く知見を持つ研究者です。地球科学の分野は、地質学、地形学、地球物理学、地球化学、火山学、年代学といった風に様々な分野に細分化されています。学問分野の違いはあれど、地球という同じ対象を研究していますので、分野と分野の隙間にこそ、これまでに見過ごされてきた鉱脈(知見)が眠っていると考えています。これまでは分析系の研究がメインでしたが、これからはコンピューターを使った数値計算などにも挑戦しながら、面白い発見ができたらと考えています。
最後に皆さんに一言お願いします
地球科学にもっと興味を持ってもらえると嬉しいです。日本の教育カリキュラムだと、高校以降は地学に触れる機会が少ない人が大半だと思います。しかし、日本列島がもつ様々な地球科学的な特徴は我々の生活と密接に関係しています。災害の際に自分や周りの人の身を守るためであったり、環境問題やエネルギー問題のような国策に関わる話から、衣食住などの日常生活に至るまで、地球科学という学問は関わってきます。日本列島のような「変動帯」で生活する皆さんには、必要な教養としてぜひ「地球科学」を捉え直していただければと思います。

ありがとうございました

関連リンク

低温領域の熱年代学の原理と地殻浅部のテクトニクスへの応用
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/128/5/128_128.707/_article/-char/ja/

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https://researchmap.jp/s_sueoka

ResearchGate(English)
https://www.researchgate.net/profile/Shigeru-Sueoka