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中性子の利用:中性子ビーム実験
 
中性子ビーム実験には、原子炉から取り出した熱中性子または冷中性子を測定試料に当てて物質の物性を明らかにする中性子散乱実験と、中性子の特質を生かして写真を撮影する中性子ラジオグラフィなどがあります。
 
中性子散乱実験
 
中性子が物質に当たった時の散乱のされ方を調べることによって、その物質を構成する原子の配列、分子に作用する力と運動状態などを観測することができます。特に波長の長い冷中性子を用いると、大きな分子構造を持つ物質の観測がより鮮明にできるようになり、高分子材料の開発、生命現象の解明等の新しい分野の研究を行うことができます。
 
 
最近のトピックス
 
フラストレート磁性体での特異的なスピン配列
  -中性子散乱法で見るスピン・格子相互作用-
スピネル磁性体HgCr2O4 で測定された無磁場(青)、13.5 テスラの磁場中(赤)における中性子粉末回折パターン(磁気反射強度のみ)を示しています。1つの四面体に注目すると、無磁場では4つの磁気モーメントのうち2つが上、2つが下という構造ですが、10 テスラ以上(磁化プラトー相)では3つが上、1つが下という構造に変化します。 スピン配列
 
HgCr2O4 の磁化プラトー相における構造。青丸、赤丸ともにCr スピンを表します(青丸が上向きスピン、赤丸が下向きスピン)。青丸間の距離が伸び、青丸-赤丸間の距離が縮むことによりこの磁気構造が安定になっていると考えられ、この系における強いスピン-格子相互作用を示しています。 磁化プラトー相
 
宇宙に強誘電体の氷が存在することを世界で初めて提唱
太陽系における強誘電体の氷XI(コオリジュウイチ)の存在を温度と太陽からの距離(1AUとは太陽と地球の距離)に対して描いた図。青と赤の円は酸素と水素を表し、氷Ih(コオリイチエッチ)と氷XIの分子の構造を示します。天王星(U)、海王星(N)、冥王星(P)に氷XIが存在すると予測。 強誘電体の氷XI
 
高分解能粉末中性子回折装置(HRPD)で得られた氷XIの回折プロファイル。氷XIの水素の位置を詳しく調べた。 氷XIの回折
 
JRR-3 中性子ビーム
 
 
中性子ラジオグラフィ
 
中性子ラジオグラフィは、中性子ビームの透過により対象物の像を得る非破壊検査技術です。中性子とX線では対象によって透過のし易さが異なることから、相補的な透過像が得られます。核外電子によって減衰するX線は、水素や炭素などを含む物質の観察に向かず、これに対して中性子は原子核まで届いて吸収・散乱されるため、X線では難しい物質の観察が可能です。特に「水分を多く含有する物質」の観察に有効で、農学研究にも広く利用されています。
 
バラ切花の乾燥していく様子
水を与えないと、花の中の水分も徐々に減少するが、茎の水分も減少しながら痩せ細っていき、首が垂れていく。
エンジンを稼動させた状態で観察すると、金属でできたピストンやバルブの動きと水素を多く含んだ燃料、潤滑油等の挙動を同時に観察できる。  
 
JRR-3 中性子ビーム